「言葉」は人の数だけ意味がある
切ない―。
よく使う言葉だけど、文字で見たときにふと不思議に思った。
「何で『切』って漢字が使われてるんだろう」
そもそも『切』っていう漢字から連想するイメージと「切ない」の言葉は、どこか結び付かない気もした。
それに『切』という漢字が使われる他の言葉とも結びつかない。
それとも、何か知らない要素があるのかと思うと途端に調べてみたくなった。
「切ない」という言葉の意味を調べてみると、大きく3つの意味がある。
1.悲しさや恋しさで、胸がしめつけられるようである。やりきれない。やるせない。
2.からだが苦しい。
3.身動きがとれない。どうしようもない。
意外と知らない意味もあるようだ。
ただ現代で使われているのは、1.の意味の場合がほとんどである。
では、もともとの疑問のヒントを得るために『切』という言葉も調べてみる。
この一文字に込められた意味は、9つもあった。
1.きる。たちきる。きりさく。
2.こする。みがく。きしる。
3.せまる。さしせまる。
4.ぴったりあう。
5.しきりに。ひたすら。
6.ねんごろ。ていねい。
7.すべて。一様に。
8.きれ。断片。
9.きり。くぎり。終わり。
とても面白いと思った。
「きる、たちきる」といった意味がある一方で、「ぴったりあう」という意味もある。
漢字は本当に不思議で面白い。
ここまで調べてみると、「切ない」という言葉の意味を正しく知る以上に、自分なりの解釈をしてみたくなった。
「切ない」という言葉。
正確には「切なし」という言葉が転じた言葉ではあるが、『切』という漢字が使われていることには変わりない。
よく聞く解釈としては、「身を切るほどつらい、苦しい」といったもの。
私としては、本来の「せつな・い」という捉え方ではなく、「せつ・ない」と捉えてみたい。
そこから私が生み出す解釈は、「切ない」=「ぴったりあう・(ことが)ない」というもの。
自分以外の人や空気感、日常に溢れる景色や色や音や匂いが、どことなく自分の気持ちとぴったりあわない。
あなたはふと、自分や自分の周りの環境を俯瞰してしまうことがないだろうか。
そうした時、何となく、なぜかは分からないけど「切ない」と感じるときがある。
そんな時は、自分と自分以外のあらゆるものとの間にどこかズレがある場合が多い気がする。
切ないというのは、自分と自分以外のものがぴったり合うことがない、孤独な要素があると感じる。
漢字一文字でも、様々な意味を持っている。
その意味を、辞書や一般的な定義で知り、覚えることは当然大切である。
ただ少しその言葉と意味を眺めてみて、自分なりの新たな目線で解釈をしてみると面白い。
一つの言葉が人によってそれぞれ解釈されるので、その言葉の幅が広がっていくように感じる。
「切ない」。
あなたはどのように解釈しますか?